プレゼンテーションは合意を形成し、相手にアクションを起こさせるためのコミュニケーションです。
その合意形成を体系化したアリストテレスは、合意形成にインパクトに大きな影響を与える3つのものとしてロゴス(理屈・論理)、エトス(性格・習性・気風)、パトス(感情・感動・情熱)を挙げました。
前回はその中のエトスについてお話をしたので、今回はパトスについてお話をしましょう。
パトス(Pathos)という言葉はパッション(Passion)と同じ語源であり、情熱とか感情を表します。
ここでいう情熱とか感情というのは、実は話し手(プレゼンター)の情熱や感情ではなく、聴き手(リスナー)の情熱や感情なんですね。
理性と感情、右脳と左脳、様々な言い方がされますが、人々に合意してもらい、行動を起こしてもらうためには、頭で納得してもらうだけでなく、感情に訴えかけることも必要だということです。
近年アメリカのマーケティング関連の書籍を読むと「エンゲージメント」という言葉がよく出てきます。
エンゲージメントというのは非常に大切な概念で、日本語でいうとつながりとか信頼というようなイメージの言葉です。
最近の広告戦略は、一方的にメッセージを伝えるプッシュのものからエンゲージメントを高めるものにシフトしていますが、これだけモノやサービスが溢れかえっている中、単に新機能や価格優位性を訴えるだけでは人々はなかなかアクションを起こしません。
その商品・サービスとなんらかのつながりを感じないと動かないということです。大企業もマス広告からソーシャルメディアを利用した広告に比重を置くようになっているのは、つながりを醸成するため、つまりエンゲージメントを高めるためなんですね。
そしてそのエンゲージメントを高めてくれるのが、エトスとパトスです。
同じ商品でも誰に勧められたかによって買うか買わないかが変わってくる。それがエトスです。
そして「なにこれ、超欲しい〜!」と思わせるのがパトスです。パトスに理由はいらないんです。「かわいー」「やばい!」で十分なんです。
ではどうやったらパトスは高まるのでしょう?
先程パトスはプレゼンターのではなく、リスナーの感情だと申し上げました。しかしリスナーの感情はプレゼンターの感情によって大いに揺さぶられます。
話し手の興奮が伝わってくると、こちらまで興奮してくることがありますよね?もしジャパネットたかたのプレゼンターが淡々と商品を説明していたら、あれだけ買いたくなるでしょうか?なりませんよね。やはりプレゼンターがあれだけハイテンションなので、こちらまでついいいかなと思ってしまう。つまり感情には感染力があるのです。
ならばプレゼンターはどんな感情を持ってプレゼンテーションに臨めばいいのでしょう?
もちろん正解はありません。
それはその商品ができた喜びかも知れません。
自分自身がそのサービスに感動していることを伝えてもいいかも知れません。
あるいはとにかく興奮を伝えるということもあります。
どれも正解ですが、経験的に一番感染する感情を一つお伝えしましょう。
それは
ワクワクです。
ワクワクはとにかく伝わります。
ワクワクしている人を見ているとこちらまで楽しくなってこないでしょうか?
そして人はワクワクしているとアクションを起こすのです。
プレゼンをすることは緊張するかも知れません。
誰でもします。
でも、少なくともプレゼンする前に、その内容がワクワクできる内容できるものであるかどうかだけはしっかりチェックしておいてください。
もしワクワクできるものでしたら大丈夫です。
気付いたらあなたの緊張はどこかへ飛んでいき、あなたのワクワクがリスナーにも感染していきますから。