FMアカデミーではプレゼンテーションを
「相手から合意を得てアクションを起こさせるためのコミュニケーション」
というふうに定義付けています。
そして合意を取るのに影響を及ぼす要素は3つあると、ギリシャの哲学者であり説得の達人である『弁論術』の著者アリストテレスは言っています。
それはロゴス(Logos)、エトス(Ethos)、パトス(Pathos)の3つです。
ロゴスとは論理・理屈、エトスとは性格・習性・気風、そしてパトスが感情・感動・情熱です。
言い換えるなら「何を(ロゴス)」「誰が(エトス)」「どうやって(パトス)」伝えるかがとても大切だということです。
この「何を」「誰が」「どうやって」ということを考える上で、とても興味深い実験があります。
これはUCLA大学のアルバート・メラビアン名誉教授が行った実験です。
メラビアンは、コミュニケーションにおける「言語(verbal)」「聴覚情報(voice)」「視覚情報(visual)」の与えるインパクトについての研究をしました。
彼の研究によると、それぞれの情報が聴き手に与えるインパクトは7%-38%-55%。
この実験結果はメラビアンの法則として有名で様々なところで引用されますが、これを多少強引にアリストテレスの区分に当てはめるなら、「何を(Logos)」が7%、「どうやって(Pathos)」が38%、「誰が(Ethos)」が55%のインパクトを与えるということになります。
もちろんメラビアンの実験は様々な定められた条件下(たとえば伝達する情報が感情に関するものだったり、被験者が女性だけだったり)のもとに行われているのでこのまま額面通りには受け取れないのですが、それでも非言語コミュニケショーンの大切さは伝わってきます。
大切なのは「誰が」伝えるか。
そしてあなたがプレゼンテーションを行うとき、この「誰」は他ならぬあなた自身になります。
あなた自身の印象を決める視覚要素は色々とあります。
服装、髪型、立ち方、身振り手振り、アイコンタクト、顔の表情 etc.
そしてメラビアンの研究結果のとおり、こうした要素があなたのプレゼンの印象を大きく決めていきます。
ではどのような服装、立ち振舞をすればいいのでしょうか?
こうしたテクニックについては様々なところで色々なことが書かれています。
ただ本当のところをいうと実は正解はないのです。
大統領選挙のテレビ討論会ではインパクトを与えて自信に満ちたように見せるため赤いネクタイがいいとする人もいます。
でも世界最高のプレゼンターの一人だったスティーブ・ジョブズは赤どころか、スーツやネクタイを着用せずに黒いイッセイ・ミヤケのタートルネックとジーンズだけで常にプレゼンをしていました。
黒のタートルネックでプレゼンをすればいいわけではないのと同じように、赤いネクタイをすればいいというものではありません。
正解はないのです。
ではどうすればいいのでしょう?
結局のところ、大事なのは自分らしくあること。
そしてその自分らしさをきちっと自分で選択することです。
それがプレゼンに55%のインパクトを与えかねないあなたのエトスなのです。
プレゼンは誰かのためにするものではありません。
あなた自身のために行うものです。
誰よりもあなたらしくあれるような選択をし、あなたのメッセージを伝えるよう心がけてください。